田島伸二(たじましんじ)の活動歴

田島伸二


ICLC国際識字文化センター代表の田島伸二は、現在、アジア・太平洋地域の識字教育を推進するため、新しい識字教育を推し進めながら、子どものための創作活動を続けています。

人間の普遍的な生き方を求めて「ヒューマン・リテラシー」を確立しようと、新しい時代におけるリテラシー活動を行っています。これらの活動は、これまでのアジア・太平洋地域でのユネスコ活動やJICA,NGOでの広範な体験を基に行われています。それらの活動は多岐にわたっており、特にアジアの国々での子どもや女性を対象にした活動は、教育/文化/平和/環境/国際理解など関係する多分野にわたっています。

ユネスコ時代には、国境を越えたアジアの共同出版計画など20年間にわたって推進したり、アジアの農村地域での識字教材開発などを行ってきましたが、こうした共同作業を通じての表現力や人間力の形成こそ、人生をたくましく幸せにする根源ではないかと考えていて、現在ICLCで推進しています。2011年現在は、3.11の原発事故などの衝撃をどう乗り越えていくか、新たな取り組みが活動が続いています。

子どもや大人に向けての寓話の創作活動は、1970年初頭から続けられ、代表作の3冊の物語は英文でオックスフォード大学出版局(OUP)からも刊行され、アジア地域では28言語で翻訳出版されています。(さびしい狐「コンキチ」、大亀ガウディの海、雲の夢想録など)ですが、とくに原発の課題を扱った海洋汚染の「大亀ガウディの海」の作品は、アジア各国では、韓国、イラン、インド、パキスタンベトナムカンボジアなど18カ国で翻訳出版されています。

2001年には、ドイツの第1回ベルリン国際文学祭や南アのアフリカ文学祭から招請されています。物語は内外で多数の舞台になっています。また識字教育論文・国際理解、哲学・社会などの分野で論文を著述し、子ども向けの多数の紙芝居などを製作しています。



教育面では、日本の内外で「つながりとむすびめの教育の(連帯教育)」、「アジアの識字教育の実態と理想」、「21世紀の国際協力のありかた」、「創造教育の重要性とは」、「人間開発と教材開発のやりかた」などさまざまなテーマで、大学や研究機関や自治体で視聴覚教材を使った幅広い講演活動を行っています。またJICA(国際協力機構)の専門家教育アドバイザーとして、1997年から2007年までパキスタンビルマミャンマー)で識字・基礎教育活動を推進しています。http://tajimashinji.at.webry.info/200806/article_5.html

また人材養成では、参加手法として田島が開発した「絵地図分析」Picture Map Analysis という「言葉と文字と絵・デザインを使った心理地図を使って、内外で子どもや教師や学生、主婦、会社員、芸術家などを対象とした研修を行っています。


絵地図分析(PMA)とは、「文字と絵とデザインで深層心理を表現し、できあがった絵地図と対話しながら人生戦略をたてる教育プログラム」です。これは個人でもグループでも使えますが、二つの大きな効果があります。一つは誰でも内面に持っている苦しみや悩みを絵地図で作成して昇華させるので、集中力や高揚感と共に自己の解放感がもたらされること。

もう一つは、絵地図を詳細に分析することによって、人生の羅針盤となる自分についての具体的な生き方を得られることです。これは長年のICLCの識字活動をもとに開発した世界でも最もユニークな実践的教育学で、絶壁に追い込まれて呻吟している現代の子どもや大人たちを対象に、言葉と絵の力を用いて、問題解決のための行動に向けて自信を持てるようにすることが最大の目的です。

ワークショップは、それぞれの体験とイメージで具体的な心の地図をつくるので非常に刺激的でおもしろいものです。これまで日本国内や海外で小中学校の教師や生徒などを対象に多数のワークショップを開催してきました。今後、専門家養成コースも開始する予定です。2007年には韓国のソウルの女子大やインドのNGOを対象に研修を行い、2009年3月には中国の南京師範大学で、院生を対象にした絵地図分析講座を開催しました。

広島県出身、現在、現在、東京

http://tajimashinji.at.webry.info/ 連絡先:tajima777@gmail.com




    

1.現在の主要な活動分野は:

国際識字文化センター(ICLC)は(日本、インド、韓国、米国、中国)の専門家とともに東京に設置されたが、1997年以来その代表を務めている。ICLCは、2000年まではイスラマバードに本部を置き、多様な活動を展開してきたが、2001年からは東京に拠点を移している。これは国際NGOとして、ユネスコ活動やユニセフ活動、環境、人権、教育分野などで働いた経験をもつ多様な専門家などで幅広く活動を行っている。支部は、パキスタン、インド、ビルマミャンマー)、韓国などにある。
主要な活動は:

1)刑務所に収容された子どもたちの人権や読書推進を行うために
識字図書館の設置(キラン図書館)の開設している(パキスタンに5館)

2)コミュニティ活性化の紙漉き技術の研修 (インド、パキスタン、韓国、ラオスビルマ難民など)

3)絵地図分析を通じて自己/社会改革 (日本、韓国、インド、パキスタンビルマなど)

4)国境を越えて平和絵本の共同出版プロジェクト (ネパール、インド、パキスタンなど)

5)絵本や紙芝居などを使って、アジアでの環境運動など草の根の社会変革を求めた活動
アフガニスタンパキスタンビルマなど)

また識字活動を通じて人間の尊厳や創造性を確立しようと「ヒューマン・リテラシー」という考え方や”連帯教育(つながりとむすびめの教育)を新たに提唱しており、その方法論として、文字や絵やデザイン地図を使った「絵地図分析」のワークショップを、インド、パキスタン、韓国、日本などの諸大学で、講義やワークショップで行っている。

デジタル時代には、知識や体験情報を「参加者全員で、集中して読み解きながら、総合分析し、アクションを作って評価することが重要であり、各国で大きな効果をあげている。現在、東京で絵地図分析研究所を主宰している。


2.2001年には、ドイツのベルリンで開催された第一回ベルリン国際文学祭の招請を受け、田島は自作の3作品『さびしい狐』、『雲の夢想禄(ガタワナ)』、『キラン図書館』を児童文学部門で朗読した。朗読は、母語を尊重する文学祭の目的もあって、これらの作品は日本語(広島弁)で朗読され、ドイツ3人の俳優は、ドイツ語に翻訳された作品を朗読した。なお、大江健三郎氏は、第五回ベルリン文学祭(2005年)に招請されている。

また2003年には、南アフリカで開催された第6回アフリカ文学祭に招請を受け、アフリカとの作家との共演やダーバン市の高校や大学などで青少年を対象に、英語で朗読した。

2004年には、代表作「コンキチ」が林洋子の語りと劉宏軍(中国)の音楽によって、東京、京都、広島で4公演が行われた。2004年、インド、ネパール、パキスタン、日本の4ヵ国で平和絵本の共同出版会議(カトマンドゥ)を開催して、国境を越えた平和絵本の共同出版活動を行っている。

2006年には、韓国の韓国テレコミュニケーション)で絵地図分析の研修を行った。(ソウル)

2007年には、ソウルのスンミョン女子大学にて研修講義する。(ソウル)、
インドのデリーと南インドNGO、日本では南アジアフォーラムや女子大などで絵地図分析を行った。

2008年10月には新作楽劇の「コンキチ」が日本・韓国・中国の3カ国の共同プロジェクトで上演される。

2007年には、米国の音楽家のT.M ホフマンの音楽とインドのパジパイの舞踏で5回公演が行われている。

また2008年10月28日には、中国・韓国・日本の共作で、中国の劉宏軍の監督で、田島伸二原作「コンキチ」の狂言公演が、東京渋谷のセルリアンタワー能楽堂と埼玉の能楽堂で行われた。(平成20年度文化庁芸術祭参加作品)




私の感じた核文明の世界

1954年3月に第五福竜丸という静岡の漁船が、太平洋のビキニ環礁沖で行われたアメリカの水爆実験で、23人の乗組員全員が被爆し死傷するという事件があった。原爆で被爆した漁船員の姿、原爆マグロを、小学校の「光の教室」という巡回映画でも見て、当時小学校1年生とはいえ大変大きなショックを受けたのだが、それは9年前に広島に投下された原子爆弾と重なってみえたからだ。


私が生まれたのは、広島市から60キロ離れた三次という町、幼少の頃よりヒロシマ原爆の恐怖や悲惨な話を親戚や被爆体験者などから聞いて育った世代だ。原爆で被災された人々の救出に向かった近所の人々は、原爆の残存放射能被爆していた。こうした体験が下地にあっただけに、原爆によって、漁民が死傷したり、被爆したマグロが大量に廃棄されたというニュースは、大きなショックを幼心に強烈に植え付けたものであった。


大人が感じる不安以上に、子どもは柔らかくまるでスポンジが水を吸収するように、すべてを吸収しているのです。喜びも不安も悲しみも・・・そして感じたのは、原爆は過去のものではなく、今も太平洋上では実験が行われていること・・・そして人生は夢や希望だけではない、底知れない恐ろしさや危機を感じたことだ。実存的な意識の芽生えだった。



1960年代は、水俣病イタイイタイ病など、日本の高度成長経済の下で、次々と深刻な環境問題が発生した環境の中にあった。私は公害で苦しむ人々の気持ちを感じながら成長した団塊の世代に属していたが、その中で痛感したことは、人間による環境問題で苦しんでいるのは人間だけではない、実は海や陸や空に住む無数の生物や動物の存在もあったということだ。しかし自然の動植物や生き物は、人間のような雄弁な言葉をもっていないので、いつも全身でかれらの苦しみや悩みを、表現しているということだ。水俣病で水銀中毒になった子猫が、苦しみの余り踊り狂うさまは実に恐ろしいものだった。北海のあざらしは、廃棄された原子力潜水艦放射能によって、数千頭が一度に海岸に打ち上げられたり、身近には工業排水によって小川の鯉がすべて死んで白い腹を炎天に向けて流れていくさまなど、日本列島が、春になっても小鳥の歌わない、みみずも出てこない、虫も見当たらない“沈黙の春”がやってきているようだった。


そしてチェルノブイリ原発で起きた大事故は、人間の文明は莫大なエネルギーを得ようとする余りに、危機的な文明の絶壁に立っているという警鐘だった。この原発で被災して亡くなられた方は、実に100万人という膨大な数に上っている。しかし、さらなるエネルギーを求めて、世界は原発の激増に邁進している。特に中国とインドなどの新興国は、それぞれ100基もの原発建設に躍起になっている。そして21世紀に入ると、環境問題は、あっという間に地球全体を覆いつくし、細胞の隅々まで汚染され、しかも氷が溶け始めて、追いつめられた北極のアザラシや鯨は生存を求めて大海洋を彷徨い始めた。地球の二酸化炭素におよる温暖化現象は、人間の文明に深刻な警鐘を鳴らしている。


原発の現場で配管工として働いてきた平井憲夫さんは、「日本が原発を始めてから1969年までは、どこの原発でも核のゴミはドラム缶に詰めて、近くの海に捨てていました。その頃はそれが当たり前だったのです。私が茨城県の東海原発にいた時、業者はドラム缶をトラックで運んでから、船に乗せて、千葉の沖に捨てに行っていました。しかし、私が原発はちょっとおかしいぞと思ったのは、このことからでした。海に捨てたドラム缶は一年も経つと腐ってしまうのに、中の放射性のゴミはどうなるのだろうか、魚はどうなるのだろうかと思ったのがはじめでした」と述べている。


1995年に南太平洋にて

1995年、太平洋8カ国のユネスコの図書開発会議を開催するため、フイジーに行ったとき、南太平洋大学の学長コナイ・ヘル・タマンという人類学者に出会った。そして“大亀ガウディの海“の本を贈呈すると、彼女はいっきに読み、「今日の環境問題や核問題を考えると、この本は太平洋のすべての国の人々が読まなければならない必読書。これは太平洋を決して核の廃棄場にしてはいけないというメッセージです。海を汚してはいけないのです」と力説された。ちょうど同年には、フランスが、太平洋のムルロワ環礁で核実験を強行しようと画策している時期だった。

私は、フイジーから帰国すると、すぐにフランスのシラク大統領に、この本の英語版を抗議書簡とともに送ったのだった。「シラク大統領殿、貴殿の言われるように核実験が人畜無害だと言われるなら、今回の核実験を太平洋の美しい環礁でやるのではなく、なぜパリの凱旋門エッフェル塔の地下でやらないのですか。それともフランスの旧植民地の人間は、焼いて食おうと、煮て食おうと、すべてフランスの自由だと言われるのですか」と尋ねた。しかしその答えとは、美しい太平洋の環礁に放射能まみれの大きな陥没を作ることに成功したニュースだった。サンゴ礁が高度の放射能で汚染されてしまったのだ。核実験は、このあとも中国、インド、パキスタン北朝鮮と続いており、そして核大国のアメリカは、現在でも臨界内核実験を数十回も強行しているのです。そして、中国やインドをはじめ、経済活動が活発化し始めたアジア地域では、環境破壊の中で貧しい人々はますます貧困に追い詰められ始めた。  
 


そして2011年、人類史上最悪の福島原発事故が起きた。


 
 

3.創作寓話作家として執筆しており、作品の多くは英語版を通じて、アジアの17ヵ国で28言語で翻訳出版されている。主要な創作の英語版は、1999年、オックスフォード大学出版局より、英文で3冊刊行されている。

The Lonely Fox and Other Stories(1999) 「コンキチーさびしいキツネ」

Gaudi's Ocean(1999) 「大亀ガウディの海」

Cloud Tales(1999) 「雲の夢想録」









<創作>

大型絵本ー大亀ガウディの海(ディンディガル・ベル、(英語版・日本語版ー2005年)

http://www.amazon.co.jp/%E5%A4%A7%E4%BA%80%E3%82%AC%E3%82%A6%E3%83%87%E3%82%A3%E3%81%AE%E6%B5%B7-%E7%94%B0%E5%B3%B6-%E4%BC%B8%E4%BA%8C/dp/499025810X

ビックリ星の伝説(三友社) 

大亀ガウディの海(透土社、丸善)(絶版)韓国語版ーAPPA出版連合金賞

大亀ガウディの海ー大型絵本(ディンディガル・ベル、ラマチャンドラン画(インド)

雲の夢想録 (蝸牛新社)

沈黙の珊瑚礁(蝸牛新社)ウノ・カマキリ

コンキチ-さびしい狐 ー4カ国にて上演される。

絵本 さばくのきょうりゅう(講談社)カン・ウー・ヒョン画(韓国) 第20回講談社出版文化賞絵本賞受賞

ゆきやま」(講談社)カン・ウー・ヒョン画(韓国)

翻訳

馬のたまご(ほるぷ出版)ハシム・カーン画(バングラデシュ
10にんのきこり(講談社、2007)ラマチャンドラン画(インド)  厚生省中央審議会特別推薦文化財
韓国の昔話(ノルブとフンブ、ウサギと亀など3冊)(汐文社
などアジア各国の画家との共著多数。

物語は、寓話スタイルで書かれており、人間や社会の深刻なテーマを扱った作品が多い。英語版を通じて海外での翻訳出版は非常に多いが、日本では入手が困難な作品もある。

5.受賞歴

第20回講談社出版文化賞受賞。2006年度の社会貢献賞受賞、メラジ・カリッド科学普及賞など。