絵本を通じて、子どもたちに、消えゆくインドの伝承文化を伝える画家


ー世界的な画家で絵本作家でもあるA.ラマチャンドランが2007年に来日した時、絵本について次のように話した。(A.ラマチャンドランは、インドの大統領から国家最高の文化勲章を受章している)

「私が幼いころ、インドには子どもの絵本がありませんでした。子ども向けの本はあっても、絵本はなかったのです。私は祖母からたくさんの昔話を聞く機会がありました。それにお祭りや宗教的な伝統行事といった視覚文化に接することもできました。今、ニューデリーなどの都会では、それは不可能に近いのです。そして何千年も伝承されてきた伝統文化が次々と消えていっているのです。そのため絵本という視覚芸術によって、子どもたちにインド文化を体験をさせてあげようと思いました。」

「私が、ヴィシュヴァバラティ(タゴール国際大学)の学生だった頃、日本画家の秋野不矩(ふく)さんが、先生としておいでになり、日本の絵本に接する機会を得ました。一流の画家たちがその才能を子どもの本の分野でも発揮していることを知りました。秋野先生が絵本を描くようにすすめてくれました。」 *秋野不矩は、日本の画壇の最高峰で文化勲章を受章した女性画家

ーあなたは「大亀ガウディの海」という絵本を描いていますね。その中で「亀」の存在を、自然環境との共存のしかたの中ですばらしい視覚表現をされていますが・・・・

「インド人にとって、亀の存在はとても重要な生き物です。聖なる存在とも言えるものです。インドの三大神のひとつに「ビシュヌ」という神様がいますが、「ビシュヌ」は、宇宙が壊れそうになったときに、亀の形になって、宇宙を下から支えたという神話があるのです。ですから、「大亀ガウディの海」の絵本は、特別の思いで描いたものです。
*大亀ガウディの海は、アジアの17言語で翻訳出版されている。

「作者の田島伸二さんは、同じ考えを有している友人で、彼の原稿を読んだ時、彼が何を伝えたいか、すぐにわかりました。これは他人が書いたお話に絵をつけた唯一の作品です。そして「核時代」という絵は、インドが初めて核実験を行った時に、大きな衝撃を受けて、一気に描いた作品です。ヒロシマナガサキのこともよく知っていたので、インドの核実験には本当に心を痛めて、憤りました。画家や芸術家のだれもが平和を強く求めています。そのために何ができるかを考える使命があると考えています。」 *原爆画家で著名な丸木位里・俊の親友でもあった。

http://www.artoframachandran.com/ (ホームページ)