絵地図分析と連帯教育

連帯教育は、開発教育のように絶えず外因に向けて理解を進める方向性から、人間の内面にもきちんと光を向けていく行動的学問です。植民地に対する経験や反省などから生まれた開発教育と異なって、連帯教育の目的は、人間同士がどうやったら外的にも内的にも連帯し、信頼の世界を築けるかと言う行動的な学問です。


太平洋地域で、識字教育の成功例と失敗例をもとに、現在、ICLCは、「絵地図分析」という新しい「自己発見のワークショップ」を国内外 (日本、インド、韓国、中国、パキスタンビルマなど)で開催していますが、それは、近年、「人の言葉を聞くこと、自分を表現する力、あるいは文字や絵で伝える表現力の強化など、パソコンからデジタル機器にいたるまでさまざまなコミュニケーション能力の開発」が、子どもたちの日常生活の中で必要とされてきており、子どもや大人を含めて「自分がどこにいるのか?どこに行こうとしているのか?いったい何をしたいのか?」揺れに揺れて不安の中で自分探しを痛切に求めていることを知ったからです。

現代は誰しも大きく揺れて地図を必要としているのです。そのために「絵地図分析というワークショップ」を開発し、自分自身の言葉と絵とデザインを使って、自分自身の内面深くに潜在している欲求や願望や煩悶などの絵地図を作成するというものです。それは自分自身の偽りのない欲求や現実などの問題を本音で作成していくもので、連帯教育のワークショップで効果的に使うことを考えています。

誰でもよく経験あることですが、室内から出ようとして窓ガラスに当たったハエやトンボは、ガラス窓に体当たりしてバタバタともがき苦しみ、その世界ですっかり消耗して生きることができなくなってくることがあります。しかしその場所から少し離れて自分の置かれているところを見れば、広々とした自由な空間や時間がいくらでもあり、脱出口だっていろいろあったにもかかわらず、地に落ちて希望や心を失っていくことがあります。脱出口を見つけるためには、子どもたちの状況を少し距離や余裕をおいて地図の中にあらゆる可能性を見つけて分析することです。

例えば子どもたちの絵地図には、「さまざまな夢や希望と同時にさまざまな欲求や不満も文章と絵によって描かれているので、「学校を破壊したい。夫婦喧嘩を見たい。あの教師を追放したい。この教師に反抗したい。この世界はお金・お金・ お金・・」と書き綴っている子どもたちの深層からの叫びに接していると、言葉の世界が、現代社会の諸矛盾と複雑に絡んでいるのがわかってきます。


こうした具体的で深刻な問題を、どのように分析し、どのように具体的な対処のしかたを作っていくことは連帯教育の直面している最も大きな課題ではないかと思うのです。内面への旅は、現代の時代が抱えている最も重要な課題です。今後、連帯教育の具体的な方法論やスキルを詳しく紹介していきます。そのためには、思想家、芸術家、写真家などの広範な専門家の参加にもよって写真や絵図を使った詳しい例示を紹介していきます。