8月15日から25日まで、「ラオスのこども」から招請を受け、ビエンチャンなどへ行って、絵地図分析ワークショップの開催に協力してきました。これはラオスで活動している「こども文化センター」の20年間の活動についての評価を行いながら、これを基に今後の方向性を定めようというものでした。

ラオスのこども」と私は関係が長く、会の代表者であるチャンタソンさんから依頼されて、1990年から私の2冊の創作本を翻訳出版していただいています。それは1990年、ラオス語で出版された「びっくり星の伝説」と2003年、「大亀ガウディの海」の2冊です。また現在は、理事としても末席に連ねていますが、今回の訪問は、2001年に次いで2回目でした。

PMA(絵地図分析)による3回のワークショップは、8月16日から始まり、場所を変えて約6時間かかる町やビエンチャンの下町など3回開催し、いずれも成功裏のうちに終了しました。参加した子どもや教師たちみんなまるで吸い寄せられるように白紙に向かって言葉や絵やデザインで、みんなで自己表現を行い、それを総合分析して「ラオスのこどもたちの理想」について発表したのです。どんなに子どもや先生たちがこうした参加に熱狂したでしょう。昼食を食べるを忘れたほどでした。これは、言葉と絵とデザインに本質的な意味を持たせーさらにそれを地図化することによってそれぞれの位置や方向性がわかるのです。そしてそれをみんなで分析することによって、深い心に眠っている欲求やニーズを掘り出し、現実的なアクションをつくりだして...いくというおもしろく刺激的な作業です。これまで絵やデザインによる表現は余りなかったようですし、絵の具を初めて手にしてとまどった子もいたように見えましたが、会場全体はいつもどの会場でも喜びがあふれていました。

そして年長のこどもが、年下のこどもたちと一緒に働きながら、絵地図を見事に構成したのです。その風景は感動的なものでした。これにはさらに教師や父兄も加わったので、たくさんの具体的な将来行動が示唆されました。こどもたちは、社会の大きな変化の中でコンピューターを求めていることもわかりましたし、メコン川の流域に住むことから「水族館」のような魚の生態を学びたい、さらにはいろいろの技能をもつ先生が欲しいという夢や欲求もよくわかりました。そしてさらに多様な内容の本を求めていることも判明したのです。

この方法はアジア地域で行ってきた識字教育の現場から作りだしたコンセプトと方法論で、今後世界中の教育現場で活用されていくことが予想されます。絵地図分析 (Picture map Analysis) は、これまで約30年間、日本ーインドー中国ー韓国ーなどユネスコのワークショップや内外の大学(東京大学、南京師範大学、梨花女子大学など)の教育機関NGO自治体などで広範に実施されてきました。 震災地での実践をもとに、今後は東京を中心に本格的な専門家の養成講座に入っていきたいと思っています。そして、いじめや教師養成や教育委員会の改革など日本の教育構造など荒廃を深めている日本の教育界や平和の構築の難しい現場などで縦横に活用していきたいと思っています。


世界的な識字の研究者パウロフレイレリテラシーのコンセプトに、文字だけでなく絵やデザインや地図などの機能や表現を含めて認識を深める事が、人間にとっていかに重要なリテラシーを構成しているかということを実証してきたものです。子どもたちは、言葉や文字以上にかれらの心理や考えを絵や色彩や線で平易に表現します。水に浮かんだ氷のように、視覚に入る事実はわずか10%、残りは水中に隠れているのが言葉の実体です。これが人間の表現の実態で、言葉も同じような機能をもっています。そのため絵地図分析という文字と絵を合体させて、地図化するという表現を確立したのです。
参考:絵地図分析


感動したシーンは3つ:メコン川の悠久とした流れ+希望にあふれたこどもたちー自己表現に夢中の若者たち