絵地図による表現やコミュニケーションは大きな意味を持って中国の教育界に登場したようです

中国では初めて絵地図分析ワークショップが、2009年3月20日から23日まで、南京師範大学で開催され、幼稚園の幼児、小学校の児童、成人女性、大学院の院生などの約80名が、絵地図分析と絵本のワークショップに参加しました。これは南京師範大学が開催したもので、ICLCは全面的に協力して、講師として日本から3名の専門家を派遣しました。

参加者の80%は、師範大学の大学院修士の学生で、このワークショップではICLCが期待した以上の多くの成果がありました。 それは今の中国で生まれている新しい個人の創造性や個人の煩悶などを、絵地図分析と言う手法を通じて本音で表現できたことが最大の成果でしょう。一人っ子政策の中国では、個人個人は激烈な競争意識の中に投げ込まれており、とても大事に育てられているようですが、新しい世代はある意味では仲間意識のコミュ二ティなどは育っていないように見えました。そして急激な発展の中国では、豊かな表現や創造性、仲間意識などが緊急に必要とされているようで、ICLCが生み出した絵地図による表現やコミュニケーションは大きな意味を持って中国の教育界に登場したようです。

それは子どもと両親が、学生と教師が、社会人同士が、絵地図という共同製作を介しながら、緊密な両者による相互のコミュニケーションを作り出したのです。 これは大変な発見でした。中国はコミュニティ意識を作るために、人為的に対外的なイデオロギー広報などを行っては、人心をまとめあげてきたのではないかと思えていたからです。そうやって伝統的にコミュ二ティなるものを形成してきたのかもしれませんが、今回はそれがごく自然な本音でのコミュニケーション形成の場や創造の場となったのでした。

中国社会はある意味では、政治やイデオロギー的な側面で上から指令が降りてくる社会ですから、こうした方法は今後、中国のコミュニケーションにおいて大きな影響を与えるかも知れません。南京師範大学は、北京師範大学と並んで国家の最も重要な教育機関と位置づけられていますが、主宰者の教授の1人は、「この自由な参加と平等な表現方法による絵地図分析は、中国での新しい教育方法を作り出した」と高い評価をしてくれました。つまり参加者自身によって本音から教材を作り出す楽しい方法には正直なところみんな驚いたようです。南京師範大学の創造性には心から感動したものでした。

中国では、私はこれまでユネスコを初め、さまざまな官製のワークショップに参加したことがありましたが、建前での認識や表現が余りにも多かったからです。学生たちが置かれている本音や問題によって、絵地図表現した今回の方法は、新鮮なショックを与えたようです。 これはICLCにとっても大きな課題を突破したことになったようです。

25日と26日はD車という新幹線に乗って、杭州の西湖など風景明美で歴史の故郷(ふるさと)の杭州に行き、西湖や霊隠寺などを見学しました。仏教文化は、隣国のインドから直接入ってきて、インドの僧侶が直接名刹を開山していますから、中国の壮大な歴史遺跡には全く言葉がありません。多くの若者が寺院で祈っている姿も印象的な風景でした。 15年前、25年前に中国を訪れたときに比べて、世相は大きく変わっているのでした。霊隠寺では、境内に空海の像が建立されているのを見ましたが、中日友好三十年の碑文の日の墨文字がいたずらによって消されているのを目にしました。悲しかったですね。靖国発言や南京の問題などが、心無き観光客を憤激させたのでしょうか。現代の日本の誤った政治家たちの歴史認識が、中国から多くを学んで帰国し日本の仏教を興した名僧空海の存在まで破壊ししているのですから。

3月28日の早朝、上海空港を発って日本へ帰国しましたが、今回南京師範大学で行った絵地図分析では実に多くのものを学び、理論的にも実践的にもようやく絵地図分析が形になったのではと思っています。インドや韓国などで試みた絵地図分析をこれからは日本社会で実践してみようと思います。 絵地図分析はただ分析ではなくて、絵地図によって具体的に個人や社会の問題を解決するという方法を見出すことですから、解決方法が見つからないといくら分析に終始しても効果も期待も達成されないということです。そして絶大なコミュニケーションのツールなのです。この方法はとにかく中国では予期できなかったおもしろいインパクトを作り出したようです。

それにしても大都市の車の渋滞と空気汚染はすごいですね。上海駅の前でも南京市でも感じました。・・・・そして揚子江黄河などが生み出す河川の環境汚染を想像すると、これは身震いしますね。現在、世界的な経済不況の中で、中国もその打撃を大きく受けており、特に就職をひかえた中国の学生たちが、思うように就職できないためにフラストレーションが高まっているように見受けられました。絵地図分析では個人の悩みが色濃く表現されますから、一人っ子政策の下で、親の期待を一身に背負って育った学生たちの人生への不安が、如実に表現されたワークショップになったからです。

一方では、2010年の上海国際万博を控えて、上海空港からリニアモーターカーが時速430キロの速さで実際に運行し始めています。 空港から上海の都心への一部の区間まで、50元(約750円)です。日本のリニア・モーターカーが営業を開始するのは、2025年だそうですから、まだ15年先ですね。中国のリニアモーターカーは、ドイツの協力で出来たものですが、中国の人々の意識には反日意識が深く浸透しており、日中の経済界まで大きく巻き込んでいたような気がします。


絵地図分析は、2009年5月に、インドとパキスタンで実践し、8月には東京でも開催する予定ですが、まず、インドでは、南インドのダリット(最下カースト層)の子どもたちを対象を「人生をたくましく生き抜くために」と「ダリット女性たちの自立を求めて」というテーマで、絵地図分析ワークショップを開催します。

そしてパキスタンでは、ラホールにある国立ラホール女子大学で、深刻な河川に関する環境問題の「絵地図分析ワークショップを開催する予定です。ICLCの試みが大きく動き出す2009年となりました。皆さまに感謝です。